先日、RICOHの元カリスマ社員、F氏にお会いしました。
CRPことCross Road Projectの牽引者、横木安良夫氏とも知り合い(※)とのことで、技術のみならず、それを使うことで実現される表現や文化の発信にも情熱を注がれていた方だというのが、F氏ご自身の話しぶりからも分かりました。
今はもう事実上閉鎖されてしまったRICOHのギャラリー。銀座にあって、仕事帰りのサラリーマン/ビジネスパーソンも気軽に寄りやすい環境だったそう。2フロアのうち1フロアを展示専用に、残りを、皆が集って軽く議論したりじっくり話し込んだりするサロンのような場にしたい、とF氏は構想し、また、実現に向けてがんばっていたのだとか。
その夢は道半ばで途切れてしまったそうですが、文理が協働していかなければ、そして文化・芸術を愛しむ人々が巷に増えていかなければ文化・芸術の未来はないと思われる今、そのような方が官ではなく民のポジション—いわゆる一般企業の社員—についこの前までいらしたこと自体が(少なくとも、私にとって)本当に喜びでした。
私が「結構写真本気なんです」と告げたとき、氏は「がんばってね、がんばれるよ、まだ若いんだし」とおっしゃってくださいました。その口調は、氏ご自身が相当にがんばってこられた方なのだろうと、何とは無しに感じさせるものでした。
美しい春の宴でした。
最後に余談ですが、これから写真を発展させるうえではレンズをカメラのボディから独立させることが急務だとF氏は考えておられたそうで、その点でRICOHのthetaは氏の理想を体現したものだといえるでしょう。
残念ながら、氏曰くthetaは現段階ではあくまで記録用とのことですが、技術者と表現者が協働してthetaの新しい可能性を開拓していければ、もしかすると状況は変わるかもしれません♪
※ かつて横木氏はRICOHの写真コンペティションで審査員を務めていた。