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Miho Yamazaki

Charles Fréger/シャルル・フレジェ


「欧州各地の伝統的な祝祭の儀式に登場する獣人の姿を収め」た「WILDER MANN」シリーズ(2010-2011)でこの写真家を知った私は、微妙な評判を聞いていたにもかかわらず、銀座メゾンエルメス フォーラムで現在行われている彼の個展を、やはり見に行ってしまいました。

紙の質感が違ったせいか、写真集で見るのとプリントされたものを見るのではかなり印象が違いました。今回の展示作品は「日本固有の仮面神や鬼たちの姿を紹介」する「YÔKAÏNOSHIMA」シリーズからのものが中心だったのですが、純粋にかわいく見えた「獣人」の写真集の写真たちと異なり、何ともいえず不気味です。

仮面などで顔が隠されている被写体の人物たちは、ストロボを炊いて撮られたかのように不自然に浮き上がっています。そして彼らは多くの場合、(体はさておくとして、少なくとも顔は)カメラと正対しています。それは、女性モデルを撮ったファッション写真のようでもあり、文化人類学的標本のようでもありました。エクゾティズム的思考に支配されたマジョリティがマイノリティに向ける好奇や欲望の眼差しに通じるものを感じました。

そんな訳で最初は彼の写真に反発を感じていた私でしたが、鑑賞しているうちに「これは、彼自身がそのような人間なのではなくて、彼は単にそのようなマジョリティの暴力的な眼差しをカメラで真似ているのだ」と思うようになってきました。

彼はおそらく、暴力行為に荷担しているのではなく、権力関係に根ざした眼差しの暴力を明るみに出しているのです。

展覧会を一通り見終わり、会場に置かれていた彼の作品集に付されている彼の文章を読んでいると、私が感じたことはおそらく割と妥当なのではないかと思えてきました。彼は権力や権力構造が孕む問題に関心を寄せ続けてきたようなのです。

とはいえ、作品が多様な解釈に向かって開かれている以上、純粋に美的快楽をもたらすものとして作品を享受することも、もちろん可能です。ギャラリーには「あ、あれかわいい!」といったような会話で盛り上がっている女性たちのグループや恋人たちもかなりいました。それはそれで、ローカルな文化の魅力をポップカルチャー的な視点から発掘する行為であり、意義深いことに違いないのです。

私はどうやら、時々シリアスに過ぎるようです(笑)。

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